「高い木の上に人が縛られてて、その人、口に何か入れられてて話せないらくしてだけど助けを求める感じは分かったの。」


僕は人が?と聞き直した。


「はっきりは分かんないけど、人だと思う。だってゲツジンは人の姿をしてても何となく分かるもん。

それにゲツジンが何故木に縛られてるの?おかしいでしょ?」


確かにそれは言えた。


ゲツジンは姿は人間でも遠くからでもゲツジンだなと分かるようになっていた。

ゲツジン独特の雰囲気が出ているのだ。


今では慣れたが脳を乗っ取られてない今宮君に違和感を感じたのも彼が性同一性障害だというだけではなかったと思う。



そういう部分では若いこと美ちゃんは感覚的に僕らより鋭いかも知れない。


「今その人を木から降ろそうと皆で行ってるけどロープでグルグル巻きにされて居るのと本人がショックが大きいみたいで大変みたい。

何日位木にあんな風にされてたのか分かんないけど、そりゃショックが大きいだろうなあと思う。」


「とにかく良かった。後はその人を何とか連れてくるだろう。

こと美ちゃんの悲鳴を聞いた時は、どうなる事かと思ってたよ。無事で良かった。」


「うん、ごめんなさい。その人を見た時に丁度トイレしていて、それであんな声が出ちゃったのかもです。」


こと美ちゃんが、顔を赤くして言う。