母が隣で笑っていたのも思い出す。


両親ともあれだけの事が起こったのだからまず、生きてないだろうと思うと一瞬悲しくなったが今出来る事をと口の中で呪文のように唱えた。


林の入口の木の上にゲツジンの影が見えた。相手が弓を構える前に僕の方が早く構えて射っていた。


ゲツジンの肩の辺りに当たって地面に落ちて来た。


僕は腰から鉄パイプを抜くと右足めがけて振りおろそうしたが、ゲツジンは横に転がってそれを避けると立ち上がって僕に拳を放ってきた。


僕はゲツジンの早い拳に驚いて尻餅をついたが、鉄パイプを横になぐようにしながら右足を打ち据えた。


ゲツジンはひっくり返ったが、まだ立ち上がろうとした。


僕も慌てて立ち上がるとゲツジンの胸を鉄パイプで打ってから右足に思いきり振り下ろした。


ゲツジンは全く動かなくなった。


「内田君右上!!」


樋口さんの大声が聞こえた。


右上の林からゲツジンが、飛び降りて来るのが見えた弓を構えながらこっちに走って来ていた。


そのゲツジンが、二本の矢でもんどりうって倒れた。


更に矢が二本、三本と続いて右足にも命中していた。


後ろを見ると樋口さん、井上ちゃん、そしてこと美ちゃんまでが矢を放って僕を助けてくれたようだ。