今宮君は微笑みながら答えた。

「多分今の状態に慣れたんだと思うよ。今は一気に疲れが来たりしないよ。

寝るのも普通の人の半分以下で充分みたいだし食べるのも半分以下で大丈夫みたいだよ。

これは僕には嬉しい事かも知れないけど多分ゲツジンもそうだって事だと思うとゾッとするよね。」


こと美ちゃんが複雑そうな顔をして無理に笑った。


ゲツジンの怖さもだが、今宮君が普通の人間で無いって事の辛さをこと美ちゃんは感じてしまったのだろう。


「打ち合わせは終わったし、ゲツジンがいつ攻撃して来るか分からないから塹壕に入ろう。」


山本さんが、わざと大きな声を出してしんみりした空気を吹き飛ばしたように感じた。


今は戦時なのだ。落ち着くまで常にある程度の緊張感を持っていないといけないのだ。


それにしても、皆がやはり精神的にも肉体的にも疲れているのは事実だった。


こと美ちゃんがリュックから袋を出すと皆に包装紙に包まれたキャラメルを一つずつ渡した。


「これは、甘くてとても美味しいのだよ。疲れたなと思ったりしたら食べて。本当は一人で食べようと思ってたんだけどね。」


そういうと笑った。


山本さんもこと美ちゃんには弱いようでありがとうねと普段は見ないような笑顔を見せた。