天狗が去り、狐さんと大木に腰を下ろす。


「ほんとに、大丈夫か。」
「だから大丈夫ですって。」
「そうか・・・。」

どこか落ち込んでいる狐さんが、
いつもの狐さんらしくなくて、
話題を考える。


「あ、そういえば・・・」
「ん?」
「さっき何しに行ってたんですか?」
「あぁ・・・、もういいんだ。」
「え、気になります!」
「い、いいっていってるだろうが。」
「いやいやいや、
私をあんな目にあわせておいてそれはないです。」
「うっ・・・。」


引け目を感じたらしい狐さんが、
諦めたように袴の胸元に手を入れる。
そこからでてきたのは、一輪の黄色い花。


「これは・・・?」
「この花の花言葉は、”無邪気”、”可憐”。
朱里にぴったりだなと思って、その・・・。」
「・・・私に?」
「・・・つけてやる、頭かせ。」
「っ、ありがとう、狐さん。」


頬を赤く染めた狐さんが、
どうしようもなく愛しくて。
どうしようもなく嬉しくて。

もしかしたら狐さんも、
私のこと・・・なんて。
少し自惚れることがない程、
鈍感でもないわけで。

でも、勘違いだったら。
この場所に来るのが怖くなる。
私には確かめる勇気がなかったの。





___でも、それも幸せな一ページだったな。