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馬が甲高くいなないて、重量感のある音を立てながら森の中を走る。

馬に跨った少年は、手綱をしっかりと握りながら、馬の背に顔をうずめた。

振り返ってはならない。

少年は自身にそう言い聞かせ、ひたすら前だけを見る。

刀の刃と刃が噛み合う音。

ぼこり、と地面の割れる音。

そして、人の悲鳴。

振り返らずとも、背後が……故郷がどのような状況であるのかが、如実にわかる。



山奥の集落で生活を営む“大地の恩恵を受ける村”ーーードリアード。


世間一般では、『土の魔法士(まほうし)集落』とも称される村である。

土と岩、山と田畑の元である大地を崇拝し、その大地の許しを得て、土の魔術を行使する。

土遁魔術(どとんまじゅつ)の開祖が作った集落だけに、そこにいる魔法士はみな土遁使いである。

他の魔法士よりすこし文化ぎ遅れているが、それでも、ドリアードの民はどこの民よりも誇り高く、屈強だった。





そんなドリアードが、あろうことか、外からやってきた少数の魔法士に追い込まれている。