__ガラッ



「失礼しまーす。」
「あら、晴人くんじゃない。」
「ども。」
「またベッド借りに来たの?」
「まぁ、そんなとこです。」
「高三にもなって。」
「うっ・・・、まだ今年度一回目っすよ。
大目に見てくださいって。」
「一回目も何もまだ四月の中旬だからね。
しかも昨年度ベッド使ったのほとんど君だし。」
「・・・てへ。」
「可愛くない。」
「ゴメンナサイ。」


保健室での先生との会話。
保健室の常連客な俺にとっての日常。
・・・ここが保健室で、
相手の先生が女の先生だからと言って、
変なことのために通っているわけではない。
残念ながら年上は守備範囲じゃないしな。


「あれ、もしかして今日誰か来てる?」
「あぁ、一年生の子よ。
保健室通いしてるの。」
「可愛い?」
「こら。」
「ゴメンナサイ。」
「ったく・・・。
これだから健全な男子高校生は。」
「先生、今、全国の健全な男子高校生を
完全に敵にまわしましたよ。」
「残念ながら守備範囲外。」
「ははっ、容赦ないっすね。
んじゃ、隣のベッド借りまーす。」
「はいはい。」


シャッ、と手慣れた手つきで、
ベッドをカーテンで囲んで布団にもぐる。


「晴人くん、」
「ん、なんですか?」


カーテンの向こう側に、
白衣を着た人影が寄る。


「私、ちょっと保健室あけるけど大丈夫よね?」
「あー、はい。わかりました。」
「んじゃ、よろしく。」
「任されましたー。」


ガラッ、と保健室のドアが開き、
足音が遠ざかる。
ベッドの上で横向きに寝返る。
すぐにすぅっと暗闇に吸い込まれる錯覚が襲う。


そうして俺は、いつものように眠りに落ちた。