「あら、そうなの?じゃあ、」



千花がぎゅっと、俺を抱きしめ返してくれた。



「こうしたら見えないから、泣けばいいじゃない」



その声に、ぬくもりに。



小さい頃からずっと、支えられて。



「っ、泣かねーよ」



「あら残念」



俺が千花とこうやって、過ごせること。



毎日が、きっとキセキだ。




「でも、」



「ん?」



「泣かねーけど。泣きたくなるほど幸せ」



千花が、くすっと笑って。



「キス、しよっか」



「誘うなよって言ってるだろ」



「だってもう、私達──」



“──付き合ってるでしょ?”



後頭部にそっと手を滑らせて引き寄せる。



この日この時の口づけは、きっと。



今までで一番、幸せだった。