いつの間にか目の前にいた千花はいなくて、奥のキッチンから水の流れる音がする。



「千花」



「なぁに?」



「ん、なんでもない」



キッチンに設置された冷蔵庫から、ペットボトルのミネラルウォーターを取り出してグラスに注ぐ。




「今日帰ってくんの、早かったな」



「仕事が早く終わったから、買い物してきたの。最近晩ご飯遅くなっちゃってたでしょう?ごめんね」



遠慮なんて、しなくていいのに。



むしろ遠慮すべきなのは、俺の方。



千花は遠慮なんてしてほしくないって、言うけど。



「気にすんなって。俺は千花に育ててもらってるようなもんだから」