「……、」



言いようのない、苦しさに襲われる。



熱でしんどくて、思考がおぼつかないはずなのに。



“ありがとう、和架”



愛おしさに塗(マミ)れた言葉を聞いても、千花が「傍にいる」と言ってくれることはなかった。



「わかってた、はずなのにな」



俺の部屋にしてくれれば良かったのに。



ベットとか、部屋全体から香る千花らしい甘い香りとか。



優しくて、でもシンプルな色合いのこの部屋にいるだけで、千花のことばかり考えてしまう。




それでなくても、千花のことばかり考えてんのに。



「っ、」



ずきん、と。



また胸に重い痛みが走る。



姉も母親もいらないから、ただ千花に傍にいてほしい。



……千花のためなら、なんだって出来るから。