「ハル」



私の、結婚する人。



愛しい人じゃなくて、結婚する人。



「部屋、和架いるだろ?」



「え?ああ、うん」



「………」



後ろ手で、パタンと扉を閉める。



和架が椅子から落ちたら大変だから、飲み物飲んで早く戻らなきゃいけないんだけど。



まぁ、和架は100%落ちないと思う。




「依千花」



ずりーな、とハルが呟いた。



「なぁに?」



「話あるから。用事終わったら、俺の部屋来て」



真剣な表情に、小さく頷く。



ハルが何を考えているのかなんて、私にわかるはずもなくて。



飲み物を飲もうと、私はキッチンへ向かって廊下を歩きだした。



背後で。



──カチャリと、扉が閉まる音がした。