「…和架」



名前を呼ばれて、どちらともなく一度キスをしてから。



「じゃあ、後でな」



先に千花の部屋を出た。



結局、なんで千花とあんなにキスしてたんだか分かんねーんだけど。



まぁ、いいか。



「……依千花」



ポツリ、と。



自分の口からこぼれ落ちた、千花の名前。



すげー、満たされてて。



千花の傍にいられて、嬉しいのに。




「亜希?」



一度部屋に戻ると、携帯に亜希から留守電が入っていた。



『あ、もしもし和架?

あのさ……
──“黒”の正体、分かったっぽい。

他のヤツにはまだ言ってないんだけど…
明日の朝、屋上で待ってる』



カチっと。



何かが動く、音がした。