感情を押し込める。



指は未だに、絡まったまま。



ああでも、解けなくてもいいかな、なんて。



「今なら、誰も見てないわよ」



「誘ってんの?」



心臓の音がうるせぇけど。



千花はそれさえ気づいてる気がする。



「誘われてくれる?」



「っ、」



ああもう、ダメだ。



堕ちてしまう。




「和架」



千花の空いた片手が俺の肩に乗せられて、顔の距離が近づいて影が重なる。



「バレないように、ね?」



千花のいたずらっぽい瞳に負けそうになる。



「……やめとけ」



なんとか堪えてそう言うと、「残念」と絡ませた指を解いて、千花は「帰るよー」と海の方へ歩いてく。



しばらく、意味もなく千花の姿を目で追った。