重なるふたりの影。
彼の首に回されてる腕。
俺の愛しい人を、千花を、彼の腕が包み込んで。
彼の手が、潮風になびく千花の黒髪を梳く。
「千花……───」
その声は、俺にも聞こえないほど。
ただ、ふたりのキスシーンはひどく頭の中に残って。
頭痛がする。
千花が拒んでる様子もない。
拒んでたら、すぐにでも止めたのに。
「っ、」
千花が俺と、添い寝してくれたあの日。
唇に触れた温もりは、確かに千花の唇だった。
だけど、今別の男とキスしてるのも千花で。
──俺とのキスは、なんだった?
そんなの、ただの同情。



