なにも言わずにただ泣き続けるわたしのそばに、賢はずっといてくれた。

 泣けるだけ泣いて、涙が乾き始めると、どんどん恥ずかしくなってきて顔をあげることができなくなった。ずっと黙って隣にいてくれる賢はどんな顔をしているだろうかと、そっと視線を向ける。

 わたしを見つめていたらしい賢と目が合うと「ぶっさいく」と笑われてしまった。

「いって! 叩くなよ!」
「賢がいつもそんなこというからでしょ!」

 怒るわたしを見て、賢はよりいっそう笑った。
 真夏の公園に、わたしたちの笑い声が響き渡る。

「あー……もう、恥ずかしいな」
「スッキリしたならいいんじゃね?」
「……ありがとう」

 瞼にはまだ熱が残ってて腫れぼったい。だけど、気持ちはだいぶ軽くなった。こんなふうに泣けて、よかったのかもしれない。

「賢がいてくれなかったら、泣けなかった」
「オレでよけりゃいつでも泣かせてやるよ」

 できたらこれっきりがいいなあと、してやったりの顔をした賢を見て思った。でも、なんとなく賢にはこの先も泣かされそうだなという予感も抱く。

「賢は、人が泣いてても辛くないの?」
「なんで。辛くはないだろ。オレのせいで泣いてたら嫌だけど」
「わたしは、ずっと辛いって思ってた。笑っていてほしいって思う」

 まあなあ、とつぶやきながら賢が夜空を仰ぐ。

「泣かれるより笑ってるほうがいいけど、泣きたいときに泣ける場所になるもの、まあたまにはな」

 自分で賢に聞いたけれど、賢の言っていることも理解できた。

 だって、わたしは去年、賢が泣いているところを見た日、泣いてくれていいと、そう思った。わたしがいることで泣けるのであれば、いつまでも隣にいようと、思ったんだ。

「だから、オレの前では、無理して笑わなくていいから、泣きたいときは呼べ。雅人の前で泣かないで無理するなら、オレとふたりのときは泣いとけ」
「……賢が優しいの変な感じ」
「オレはいつでも優しいだろが」

 こつりと頭を小突かれて、今度はわたしがケラケラと笑った。そんなわたしを見ながら賢が「そうやって笑ってろ」と、また優しいことを言う。