雅人は、そんなわたしを見ててくれた。

 ——『美輝にかっこわるいところは見せたくないんだろ』

 賢がそう言ってくれた。

 雅人にそう思ってもらえたのは、あのときの、今までのわたしがいたからだ。

「過去は変えられねえけど、今起こった出来事にどうするかを、考えることはできるだろ。俺は、今美輝がしたこと、すげえな、って思ってるよ。なにしたかは、よくわかんないけど、なんとなく」
「……うん」
「雅人も、きっと、笑ってる」

 そうかな。そうだよね。
 だったら、いいかな。

 ちょっとだけ、やっぱり悔しいけれど。


 
 俯いて涙を流すと、賢がなにも言わずにわたしを引き寄せて、胸に顔を押し付ける。

 きっと、今頃町田さんは目を覚まして、雅人は、泣きながら笑ってるだろう。感情のままに、嬉し涙を流すだろう。とびっきりの笑顔で、町田さんを迎えるだろう。

 それは、多分、わたしは見ることが出来ない笑顔だ。

 それを、今、わたしは心から、よかったなって思ってる。そう思える自分が、好きだと思った。



 生きている賢のぬくもりがわたしの目の前にある。わたしは賢の背中に手を回してぎゅうっと抱きしめた。

 涙の理由が、喜びなのか、悔しさなのか、それとも安堵なのかはわからない。それでも溢れて止まらない涙を堪えることをせずに思い切り、賢の腕の中で泣いた。