「フフ……」


意味深な園長の笑い声に柚の期待は膨らむ。


園長室のドアを軽くノックして園長が颯爽と入って行く。


「お待たせ」


期待に胸を膨らませた柚が、いったん呼吸を整え最大の笑顔を讃えて中に入って行く。

『いた!』

後ろ姿の人物が目に入った。
白い長袖のTシャツに細身のジーンズ。
『ショートカット。OK。清潔感十分。OK。背は……高い。高い所の物を取ってもらうのに便利。OK。後、高い木の枝切りも。いい匂い。ん?保育士に香水はダメでしょ。まっ、これからよね。少し体つきがたくましい気もするけど……、それはこの仕事をする上で長所だし。うん。合格。いいコ見つけてくれました』


柚は入り口に立ち、園長の前に立っている人物の後ろ姿をニヤニヤしながら品定めした。


「さぁ、紹介するわね」


柚はその場で背筋を伸ばして軽く深呼吸する。
『はい』とその人物はゆっくり振り返る。
柚の笑顔とその人物の笑顔が重なる。
途中まで。
次の瞬間、柚は激しい目眩に後ろによろけた。