~いっぽ~
保育園の門をくぐってすぐの左にある幅が2mほどの花壇は、一面がピンクに染まっている。
柚はかがんで、そのピンクの秋桜をより近くで見た。
「じっとしないのね」
絶えず風に揺れている。
何だか自分の子供の頃に似ていると思った。
いつも暗くなるまで外で遊んだ。
近所の空き地で作った秘密基地。
大勢での鬼ごっこ。
綺麗な花の蜜を吸ったり、転んでケガをして血が出る事は日常茶飯事だった。
今は。
小さな子供が走り回る場所もなく、色んな危険から外を一人で歩くことすら危うくなっている。
せめてここにいる時間は子供らしく、楽しく夢を持って過ごして欲しい。
そのお手伝いが出来れば。
そう思って柚は頑張っている。
そして。
園に送迎に来る母親たちの癒しになればと園長は花壇の手入れにも気を配っていた。
季節の花々は美しく、忘れそうな時を感じさせてくれる。
この花壇は母親たちのみならず、柚の心も癒している。
「今日も頑張ろ」
一際、ピンクが綺麗な秋桜を見つけて微笑むと、ゆっくりと立ち上がった。

