「大事な用か何か?まさか寝坊って事はないでしょ?」
急いで椅子に座った蓮に風人が小声で話しかける。
「残念。寝坊だよ」
元々、優しい蓮の目が、もっと優しく風人を見る。
一瞬、風人の心の中に爽やかな風が流れた。
今までの蓮とは何か違う。
何かキラキラした、充実感に満ちたような顔。
蓮が一番キラキラするのは歌っている時。
何もない、打ち合わせでこんなにキラキラしたオーラを出すのは有り得ない。
「何かあった?」
「えっ?」
「あ……いや、何でもない。ごめん。気にしないで」
『そう?』と、蓮はまた風人に優しく笑う。
この変な余裕はどこから来るのだろう。
風人は蓮の横顔をしばらく見つめた。

