保育士は超アイドル!〜恋していいですか?〜



何度、左の手首を見ただろう。
時間が経つのがこれほど遅く感じた日はない。
柚の白い腕時計の針はいつもと同じように時を刻んでいるはずだが、どうやら当の持ち主にはそうは思えないらしい。


「まだ10分か……」


小さなため息が漏れた。
約束の時間まで、まだ20分もある。
30分前に着いた柚の心はソワソワ落ち着かない。
これでも1時間前に到着する気持ちを抑えた自分を褒めてやりたかった。


昨日の夜、柚のベッドにはありったけの服が並んだ。
ありったけといっても、たかがしれている。
ほとんどがジャージの柚にとって、勝負服などという恋愛を真剣に頑張っている女の子が持っているシャレたものがない。
押入れをガサゴソといじくり回し、ようやく衣装ケースの奥の、今回の事が無ければ絶対に開けなかったであろう古い衣装ケースを見つけた。
開ける瞬間の、まるで宝箱を開けるかのようなときめいた気持ち。
それは、ずっと忘れていた『恋する女の子』の気持ちを思い出させてくれていた。