部屋を出て行った花畑 蜜の後をぼんやり見ていた柚の肩を園長が軽くポンと叩いた。
「どう?彼、カッコイイでしょ?」
「はい。そうですね。……えっ?いや、違います!私、そんな目で……」
真っ赤になった柚が必死に言葉を取り消す。
「いいのよ。カッコイイもんはカッコイイんだから。フフフ。意外とお似合いなんじゃない?」
『園長!』と、柚は怒った声を出したが、赤くなった顔が元に戻りそうもなく、急いで部屋を出た。
バタンと閉じたドアにもたれ、柚は深呼吸する。
秋の冷たい風が火照った顔に気持ちいい。
満員電車以外で男の人が体を近付けて来たのは初めてかもしれない。
まして耳元で囁くなんて。
いや、違う。囁いてはいない。
話したんだ。
あれは会話のひとつ。
「どう?彼、カッコイイでしょ?」
「はい。そうですね。……えっ?いや、違います!私、そんな目で……」
真っ赤になった柚が必死に言葉を取り消す。
「いいのよ。カッコイイもんはカッコイイんだから。フフフ。意外とお似合いなんじゃない?」
『園長!』と、柚は怒った声を出したが、赤くなった顔が元に戻りそうもなく、急いで部屋を出た。
バタンと閉じたドアにもたれ、柚は深呼吸する。
秋の冷たい風が火照った顔に気持ちいい。
満員電車以外で男の人が体を近付けて来たのは初めてかもしれない。
まして耳元で囁くなんて。
いや、違う。囁いてはいない。
話したんだ。
あれは会話のひとつ。

