私は無地のエプロンをつけたまま、ラベンダー荘の玄関を出た。

 ブリキのじょうろが転がる前庭を見れば、昨日の台風で散ったバラの花びらと枯れ葉が、芝生のいたるところに散ばっていた。

 新芽をいっぱいに広げた木々についた昨夜の雫が、太陽を受けて宝石のように輝いている。

 いつものように、私は視線をラティスの朝顔にうつす。

 ついこの間まで、朝顔の前に立っていた青年の姿はもうない。

 しかし、残された朝顔は夏の暑さにもめげずに、どんどん蔓を伸ばし、今日も新しい花を咲かせていた。