「そういえば、かおりはどうするんだ?家帰るなら送っていくけど」

 信也の言葉にかおりは首を横に振る。

「優子が迷惑じゃなければ、もう一晩泊めてくれると嬉しいな」

 私がかおりに微笑みながらうなづく。

それを見て、信也とアキラはそそくさとラベンダー荘に入っていく。

「そうだ!うさぎ、どうしてるかな?ちゃんと世話はしていったけど」

 かおりと私は顔を見合わせる。

「いこっ」

 かおりは急いでラベンダー荘へ入っていった。

「優子さん?」

 康孝が突っ立ったままの私の背を押す。

「わたし、あと一ヶ月、ラベンダー荘で頑張ってみます。それで、もし失ったものを見つけられたら、わたしも康孝さんみたいに、ここに来た人を助けたいな」

 私の言葉に、康孝はゆっくり一度うなずいた。

「まあ、ゆっくりがんばりなさい。本来、人間は自分ひとりの事だけでも、精一杯なはずだから」

 そこへかおりの感激した声が飛んでくる。

「優子、はやく来てみて!!ラベンダー入りのお風呂がもう沸いてるよ!管理人だよ。絶対管理人が入れたんだよ!」

 私は、陽気な雰囲気のラベンダー荘を見つめる。

「はやくしないと信也に、先に入られちゃうよ!」

 かおりの元気な声に自然と足が動き出す。

「今、行く!」

 私は勢いよく返事をして、康孝をおいてラベンダー荘の中へ走り出した。