「食べてすぐ寝ると、牛になるよ」

 お弁当箱を端によけて、レジャーシートいっぱいに横になった。

 背中にも、ひんやりとした大地の温度が伝わってくる。

「じゃあ、もとは人間だった牛がいるってこと?」

「そんなの、いやー」

 二人で同じ空を見上げる。

 目が慣れてしまえば、それほどまぶしくはない。

 じっと雲を眺める。

 上空の雲は意外に早く、流れていく。

 どこか遠くの目的地でもあるのだろうか。

「上のほうは風が強いね」

 かおりの言葉に答えるように、私たちの傍らにそびえる大きな木が、サワサワと鳴った。

 地上の風は涼々しく、とても穏やかに吹いている。

「ねぇ優子」

 私が顔を向けると、すぐ横に、かおりの顔があった。