私はハーブティーを二人分、紙コップに注ぐ。

 ピクニックなんて何年ぶりだろう。

「優子すごい!もしかして、このハムも作ったの?」

 かおりがお弁当箱の隅を指差す。

「うん、それはハーブの蒸し鶏。」

「んー。おいしいー。お店で食べるよりおいしいよ!」

「ありがとう」

 優しい時間が流れていく。

 ラベンダー荘に来る前は、こんな時間の使い方をしたことがなかった。

 常に何かにおわれるように、自分を駆り立て、苦しい道を自ら選んで進んでいた気がする。

 息抜きをせずにがんばり続けたから、限界が来たのかもしれない。

 気づけば、回復できないほど疲れ果てていた。

「この卵焼き、いい香り」

 かおりは、青海苔とじゃこの、だし巻き卵を口元へ運んでいく。

 でも、二ヶ月前では想像もできないほど、この世界で生きることが楽になってきている。

 これがラベンダー荘の力なのだろうか。