みんなは顔を見合わせる。

「うさぎなら、いまキッチンで寝てるけど」

 信也は私の顔を窺いながら言った。

「え?!」

 ウサギ逃げ出してなかったんだ。

「もしかして、ウサギ探してたの?いままで?」

 私は微妙にうなずいた。

 途中から死のうと思っていたなんて、言えない。

「ちっ」

 アキラは舌打ちして、早々ラベンダー荘に入っていく。

「あはははは、ウサギ追いかけて失踪するなんて、アリスかよ」

 信也は気が抜けたのとおかしいので、笑いが止まらなくなった。

 かおりは儚げに笑う。

「しばらく優子がいなくなったトラウマ、消えそうにないわ」

「ごめんね」

 私は、急に涙が出てきて止まらなくなった。

 私なんていらないと思ってたのに。

 いてもいなくても、世界は変わらないと思っていたのに。

「わたし、知らなかったよ」

 こんなに大切にされてたなんて。

 私がみんなの世界の一部だったなんて。

 隣家の外灯はすでに消えていて、まっくらな夜の街の中に私たちは立っていた。

 安心したように寝息を立てている人々の安らかな顔を想像する。

 かおりの後ろには眠たげなラベンダー荘が、早く入りなさいと静かに口をあけていた。