「優子!」

 一時間後、ラベンダー荘が見えると同時にかおりが駆け寄ってきた。

 目を真っ赤にしたかおりが、しっかりと私を抱きしめる。

「優子ぉ」

 かおりはそのまま離れようとしない。

 壁にもたれていた信也がゆっくりと近づいてくる。

 座り込んでいたアキラは立ち上がって、不機嫌な顔で私を見た。

「大変だったんだぞ、警察に電話したり」

 信也が私の頭に手をのせる。

「警察にかけたの?」

「ああ、相手にしてもらえなかったけど。あとで、実家の住所と電話番号教えろよ。まあ、もう二度とこんなことさせないけどな」

 信也が強い瞳で私を見た。

「みんなごめんなさい。こんなに心配かけると思わなくて」

 私は謝るしかできなかった。

「心配するに決まってんだろ!」

 アキラがたまらず声を上げる。

「優子は、あたしたちの大事な―――」

 アキラはそこまで言って、はっとなって言葉を切った。


 顔を背けて続ける気はないらしい。

「どうしていきなりいなくなったの?なにかあった?」

 かおりは少し安心した様子で、私の顔を見つめた。

「うさぎが逃げちゃったの」

「うさぎ?」