「大丈夫。記憶がないせいで大切にする自分がないのなら、私たちと作っていけばいいわ。だから、迷わないで。アキラのこと、一番考えてる私たちを信じて。アキラが納得する答えが出せるまで、私たちが一緒に考えてあげる。康孝さんも信也も優子も、アキラが望むなら絶対に助けてくれるから。」

 バラの甘い香りがする。

「あなたは一人じゃないのよ」

 かおりはアキラを抱きしめながら、短い髪をそっと撫でた。

 アキラはかおりの胸元で揺れているとんぼ玉を、見つめながら言葉を吐き出す。

「あたしのこと、嫌いだと、思ってた」

「私も。でも好きだったんだって今気づいたわ」

 痩せたアキラの顔を、かおりは両手で包み込む。

「大丈夫。なんていったって、ここは『失ったものが見つかるラベンダー荘』でしょ?アキラが見つけたいと思えば、必ず見つけられるわ」

 かおりは自信たっぷりに言い放った。

「かおり」

 アキラは消え入りそうな声でささやく。

「ありがとう」

 それを聞いてかおりは照れくさそうに目を細めて答える。

「どういたしまして」