最初に食べ終わったアキラに続いて、信也、かおりが箸を置く。

「優子ちゃんが来た日に、少し話したっけ?」

 どこから話したらいいのか、迷いながら信也が口を開いた。

「このはがきの送り主が、五人目の住人なんだ」

 青い空がとこまでも続く、雪の残る山の岩肌で撮影されたらしき写真。

 大きな登山用のリュックを背負った男性が、こちらに向かって手を上げている。


『もうすぐ帰ります。

   YASUTAKA』


 そう写真の中に走り書きされている。

「旅人なの」

 かおりが照れくさそうに付け加える。

 アキラは興味深そうに写真を眺める。

「康孝さんは、このメンバーの中で一番の古株でね。一年に二、三回。ふらっとラベンダー荘に帰って来るんだよ。家賃も帰る前にいろんな場所から問答無用で管理人の口座に振り込んでるらしい。」

 まだまだ話したいことがたくさんありそうな信也だが、不意に思い立ったように、顔をしかめた。

「でも、初めてだな。帰る前にこんなの送ってくるなんて」

 信也の言葉に「あの人の行動は予測できないから」とアキラが返す。

「帰ってきて、まだ謎が見つかってなかったら、康孝さんがっかりするかもな」

「見つけそうなやつもいるけどね」

 アキラがちらりとかおりを確認する。

 タイミングを得たかおりが、意志のこもった瞳をみんなに向けた。

「あのね、そのことなんだけど。わたし、みんなに話があるの」