「陽茉莉っ!!」 私が玄関のドアに手をかけた時、苡槻が私の”名前”を呼んだ。 苡槻は、ほんの少し離れたところにいた。 「陽茉莉」 「…ん?」 本当は、もう苡槻の顔を見たくなかった。 「1つ、いいこと教えてやるよ」 「はぁ…?」 暗くて、苡槻の顔はよく見えなかった。 ―――でも。 苡槻…? なんとなくだけど、笑ってるように感じた。 笑顔じゃなくて、寂しげな笑みで。