苡槻が私を家まで送ってくれたけど、お互い何も話そうとしなかった。 太陽は、もうすっかり沈んでいた。 代わりに、月や星たちが輝き始めている。 「ほら、着いたぞ。遅くなってすいませんって、おばさんに言っといて」 感情のこもっていない、苡槻の声。 …何も、感じない。 「分かった」 「じゃ、またな」 苡槻は私に背を向けてゆっくりと歩き出した。 どんどん小さくなる背中。 見つめているだけで、さっきの言葉を思い出し、胸が苦しくなる。 ……帰ろう。