「なんだかやけに混んでんな~。しかも女ばっかだけど……いつもこんななのか?」
「う~ん、どうなんだろうね~? もともと女の子は買い物好きだから、きっといつもこんな感じなんじゃないかな~……?」
「ふ~ん」
桐生君と普通に会話をしながら並んで歩くふうを装いつつ、徐々にその距離を開けていく。
すると……
「あの~……ちょっといいですか?」
「今、おひとりですか?」
「んあ? あっ……いや……」
見事私のもくろみ通りに、先程騒いでいた女の子達が桐生君に声を掛けてきた。
桐生君から離れた私を、バッチリ他人だと勘違いしてくれたようだ。
隣にいたはずの私がいつの間にかいないことに気付き、桐生君がキツネにつままれたような顔をしている。
女の子達も男の子に声を掛けるぐらいだから相当積極的な性格の子達らしく、ガッチリと桐生君のことを囲んでそう簡単には解放してくれそうにない。
よしっ! うまくいった!!
「桐生君! 私ちょっと買い物してくるから、適当に好きな物見ててねっ」
「お、おいっ、七瀬!」
これ好都合とばかりに私は遠くから桐生君に声をかけると、女の子達に桐生君を任せ猛ダッシュでバレンタイン特設コーナーへと急いだのだった。

