キスから始まる方程式



うっわ。平日なのに思ったより人多いな……。



想像以上に賑わっている店内を見て若干気後れする私。


特に遥か向こうに見えるお目当てのバレンタイン特設コーナーには、数えきれない程の女子高生が群がっていた。



ど、どうしよう……。とりあえず、さり気なーく桐生君には他のコーナーでも見て来てもらって……。



よしっ、これっきゃない!



心の中でひそかに作戦を練りつつ、桐生君に向かって話を切り出した。



「あ、あのさ桐生君。せっかく買い物に来たんだし、何か自分の好きな物でも見ておいでよ」

「俺が見たい物?」

「うん、そう! 服とか雑誌とかゲームとか……何かあるでしょ?」

「う~ん……」



しばらくその場に立ち止まり考え込む桐生君。



「いや。やっぱいい」

「え!? なんで!?」

「俺が今日見たいのは、お前が買おうとしてる物だから」

「!?」



そう呟くと、再び私の隣で歩き始めたのだった。