隣にいる桐生君とキッチリ50センチの距離を取りつつ、淡々と歩を進める。
まだドキドキと高速稼働する胸を押さえながら、必死に平静を装う私。
き、桐生君といると心臓がいくつあっても足んない……。
翔といる時とはまた違ったドキドキが、桐生君と一緒にいると私を襲うのだった。
「んで、今日はいったいどんな用事なんだ?」
「え!? 今日!? えと、た、単なる買い物だけどっ」
「買い物? ふ~ん」
意識しまくりで思わず声が裏返ってしまう。
努力とは裏腹にとても平常心を保てそうにない。
「女の買い物って~と、洋服とかか?」
「ううんっ! そんなたいしたものじゃないよ」
「『たいしたものじゃない』ねぇ……」
いくら何でも私の気持ち知ってる桐生君に、翔に渡すためのチョコですなんて言えないよ。
ハッキリと目的を言わない私に、含むような言い方をして考え込む桐生君。
そうこうしているうちに、ようやく駅前のデパートへと辿り着いたのだった。

