ひたすら歩くこと5分。
私の3メートル後方をピタリとついてくる桐生君をクルリと振り返り、再び声を荒げた。
「なんっで、ついてくんのっ」
「なんでって、俺もその用事とやらに付き合おうかと」
「なっ……!? なんで頼んでもいないのに、勝手に付き合うとか決めちゃうわけ!?」
「そんなの、お前のことなら何でも知りたいからに決まってんだろ?」
「っ!?」
相変わらず涼しい表情で、顔から火が出るようなセリフを平然と言ってのける。
その度にドキドキと速さを増して騒ぎ出す自分の心臓がなんとも情けない。
そんな私の反応を愉しむように、更に桐生君が言葉を繰り出してきた。
「もっと理由聞きたいか? なんなら耳元で囁いてやっても……」
「わわわ~っ! も、もうわかったからっ」
それ以上近付くなと言わんばかりに両手を前に突き出して、近付こうとする桐生君の体を慌ててガードする。
「そうか? 残念だけど、じゃあまた次の機会にするか」
そう言って桐生君が、今度は普通に隣に並んで歩き出した。

