キスから始まる方程式



「ちょ、やだっ、離してっ」

「やだ。だってお前の背中、すっげー寂しそうだったもん」

「っ!」



私の心を見抜くように、桐生君がいきなり痛いところを突いてくる。


それでもなんとか桐生君の腕から逃れようと、じたばたともがく私。



翔がいるのにっ……。こんなところ見られたくないよ……っ。



翔がそのまま気付かずに振り返らないでくれればよかったのだが、私の騒いでいる声が聞こえてしまったらしい。


不幸にもあっさり気付かれてしまった。



「な……七瀬っ!」



桐生君に後ろから抱きつかれている私を見た翔が、怖い顔をしながらものすごい勢いで駆け寄ってきた。



「やめろよ。七瀬が嫌がってるだろ!?」

「っ! 翔……っ」



間髪をいれず翔が桐生君の腕をグッとつかむ。



「おっと。王子様のご登場だ」

「なにぃっ」



桐生君は翔を挑発するようにそう呟くと、それまで私を抱きしめていた腕を離した。