「お……はよ……」
あれ……? もう怒ってないのかな……?
何事もなかったように並んで歩く翔を横目で見ながら、ホッと胸を撫で下ろす。
「なぁ、夕べテレビでやってたサッカーの試合見たか?」
「え? あっ、ううん」
「え゛~っ……!? すっげー面白かったんだぜ! 本田のあの絶妙なフリーキック! っく~! 俺もあんなふうにゴール決めてみたいぜっ」
昨夜のサッカー中継の話題を、目をキラキラと輝かせながら楽しそうに話す翔。
やっぱり翔が隣にいるのっていいな……。
そんな翔を見ているだけで、嫌なことも全部吹き飛んでしまうくらい幸せな気持ちになってしまうのだ。
「翔ってば、朝からはしゃぎすぎだよ」
「ん? そんなことないぜ! 俺はこれが普通なのっ」
「ったく。ほんっと翔は昔からサッカーばかだよね」
「サッカーばかとはなんだよ。俺は純粋にサッカー一筋なだけなんだっ」
クスクスと笑いながら、翔と冗談を言い合う。
こんな何気ないやりとりが、今の私にはとても貴重で大切な時間だった。
「風間君! おはよう」
!!
そう。昔は当たり前だった二人だけの時間が、今はこうしてすぐに終わりを告げる。
振り返った視線の先に映ったのは、ニッコリと笑顔で手を振り駆け寄ってくる南條さんの姿だった。

