キスから始まる方程式



「行ってきま~す」



ガチャッ



玄関を開けると、冬特有の弱々しく淡い陽光が、道路脇に寄せられた雪に反射してキラキラと輝いていた。



「う~っ……今日も寒いよ~……」



巻いていたニットのマフラーを口もとまで覆うようにずらし、ぶるりと身震いしながら学校へと歩き出す。


翔の家の前に差し掛かった時、ガチャリと玄関の扉が開き偶然にも翔が姿を現した。



「あ……」



翔……。



翔を怒らせて以来、顔を合わせるのは初めてである。


先日降った雪の影響で、恐らく今日もサッカー部の朝練が中止なのだろう。



どうしよう……。まだ心の準備ができてないよ……。



どう接したらよいかわからず、気付かなかったフリをして足早に通り過ぎようとする私。



すると……



「おっす」

「!」



私に気が付いた翔が、いつもと同じように声を掛けてきた。