「ぐあぁ~っ……。桐生君と会いたくないよ~……。二回もおもいっきりひっぱたいちゃったしなー……」



これでも一応、バレー部のエースである。


そんな剛腕の私から容赦ない平手打ちをくらったのだから、さぞかし頬が痛かったことだろう。



「今日……ズル休みしちゃおっかな……」



そんなことを半ば本気で呟いた時



バサッ



「うぇっ!?」



突然くるまっていた布団を勢いよく引き剥がされた。



「だーれーがーズル休みするってーっ?」

「え? えっ? あれっ? お、お母さん……? あはは、いつからそこに……」



なかなか起きてこない私を不審に思ったのか、いつの間にかお母さんが部屋に起こしに入ってきていたらしい。


目くじらを立てて私を睨みつけるお母さん。


私の『ズル休み』発言に、相当怒っているようだ。



「バカなこと言ってないで、さっさと起きて支度しなさい!」

「うぅっ……は~い……」



そうお母さんはピシャリと私を一喝すると、忙しげに階下へと下りて行った。



「しょ~がない……。覚悟決めて行くっきゃないか」



お母さんのお説教でようやくやる気になった私は、身を切られる思いで愛しの布団に別れを告げ、急ピッチで出かける準備に取り掛かったのだった。