キスから始まる方程式



? 誰だっけこの人……?



そこに立っていたのは、見覚えのない長身の男の子だった。



私に声掛けてきたの、この人じゃなかったのかな……?



そう思った私は、辺りをキョロキョロと見回してみる。


けれど周りには他に誰も見当たらない。



誰もいない……。もしかして、本当にこの人だったのかな……。



困った私は、とりあえず目の前の男の子に声を掛けることにした。



「あ、あのー……今私の名前を呼んだのあなたですか?」



恐る恐る尋ねる私を、男の子が真っ直ぐな瞳で見つめてくる。


しかし待てど暮らせどひたすら私を見つめるばかりで、肝心の返事が一向に返って来ない。



な、なななにこの人っ! なんかずっと私のこと見つめてるんだけどっ……。



ついに業を煮やした私が、再び話しかけようとしたその時……



「俺のこと、覚えてないのか?」

「え……?」



突然男の子がポツリと呟いた。