キスから始まる方程式



お互い何も言わないまま、どれくらいそうしていただろうか。



程なくして桐生君が「やっぱり、そうなんだな」と、とても悲しげに小さく呟いた。



「……っ」



おそらく、翔との仲を聞かれた時と同じように、何も言わない私の態度を肯定ととったのだろう。


この状況ならば、確かにそう思われても仕方ない。


それならば早く否定するべきなのでは……と頭では思うのだが、意に反してまるで声を失ってしまったかのように、何も言葉が出てこないのだった。



いったい本当の私は、どうしたいのだろう?



頭と体の動きがマッチせず、混乱が更に混乱を呼ぶ。


やはりこのまま黙っているのが最善なのか。


それとも、実はそれが桐生君にとって最も酷い仕打ちなのか……。



心が麻痺して、もう自分では善悪の判断さえすることができなかった。



どうしたら……いいの……?



いっぱいいっぱいの心が悲鳴をあげ、再び涙となって溢れ出し熱い頬を濡らす。


考えなければいけないことが早くも自分の許容量を超え、完全にオーバーヒート状態だった。