キスから始まる方程式



「風間から聞いた」



翔!?



桐生君が発する一言一言が、徐々に私を追いつめて行く。


次に出てくる言葉が恐くて、私はおもわずゴクリと息を呑んだ。



「アイツ、結城にフラれたって言ってた」

「っ!!」



想像していた通りの台詞に、胸の鼓動がドクンと大きな音をたてる。



「なぁ、本当なのか? 」

「……っ」



冷静なようでいて、どこか憤りを感じるような桐生君の声音。



逃げ場を失くした現状と威圧的な感じさえするその声に、頭の中が真っ白になって返す言葉が全く浮かばない。


それでもここはどうあっても、そんなことはないと言い張らなければならない場面なのだが……



「本当に風間と付き合ってないのか?」

「そ、それは……っ」



けれど私にはどうしてもそれ以上、先程までの自分の言葉を貫き通すことができなかった。



どうしよう……。 もうこれ以上……私……っ!!



言い逃れができない絶体絶命のピンチに、体中の血液が逆流する。




私が否定できない本当の理由。



それは、桐生君が言っていることが紛れもない事実だからだった。