キスから始まる方程式



「結城…… なんで、嘘つくんだ……?」

「っ!!」



あまりにも思いがけない桐生君の言葉に、思考回路が一斉に停止する。


あれほど頑張って装っていた作り笑いも、今はもう私の顔から完全に消え失せていた。



「え……、あ……の……。 な、なに言ってるの? 桐生君」



冷や汗がジワリと体中から噴き出す。


声が震えるのを必死に押し隠しながら、それでもなんとか懸命に言葉を絞り出した。



「私、嘘なんてべつに……っ」

「……」

「ちゃ、ちゃんと翔とだってうまくいってるし、毎日すっごく楽しいし……」



そうやって次々に言葉を並べ立てる私とは対照的に、桐生君は堅く口を閉ざしている。


それがまた余計に私の心を刺激し、更に饒舌さを加速させた。



「それに、ほんとはこのあと翔と会う約束だってしてるし……っ。だから、だから私、嘘なんかついてな……」

「本当は、風間と付き合ってないんだろ……?」

「っ!!!」




なんで!?




私の言葉を遮るように呟く桐生君を、驚きのあまり凝視する私。


先程の勢いはどこへやら、私はすっかり言葉を失い、そのまま動けなくなってしまった。