「あ……、うん! ぼちぼち、かなっ」
「……」
それでも悲しみが伝わらないよう、無理矢理作り笑いをして明るく振る舞う。
これまで耐えてきた努力と桐生君の幸せを守るためには、こうするよりほかないのだ。
……あれ?
けれど、なぜだか今回も桐生君からの返事はすぐには返ってこなかった。
……? 私ってば、また変なこと言っちゃった?
桐生君の反応に咄嗟にそう思ったけれど、自分の言動を思い返してみても特に落ち度があったとも思えない。
特に何も言わないってことは、この話はこれでおしまいってことなのかな。
小首を傾げながら、どうしたものかと思案すること十数秒。
不意に頭の中に、ピコンと答えが閃いた。
あぁ、そっか。桐生君にとっては、私が翔とうまくいっていようがいまいが、結局のところどうでもいいことなんだ。
そう気が付くと同時に、たちまち胸の奥に広がる物寂しさと複雑な思い。
そうだよね。そんなの当たり前だよね……。
再び溢れそうな涙をこらえながら、「うんうん」と自分で自分を言い聞かせるように、何度も繰り返し心の中で頷く。
しかし次の瞬間、そんな私の健気な思いと努力は、桐生君から発せられた意外な一言によって一瞬にして掻き消されることとなった。

