キスから始まる方程式



二人の間に再び沈黙が流れる。



けどまさか、こんなふうに桐生君と星を見ることになるなんて……夢にも思わなかったな。



口を閉ざしたら閉ざしたで、またあれやこれやと無尽蔵に浮かんでくる複雑な思い。



せっかく一緒に星を見られても、もう桐生君と幸せになんてなれないのに……。



絶対に叶わないとばかり思っていた桐生君との約束が、皮肉にも偶然という形で現実になるとは……。



不意に桐生君と幸せに過ごしていた日々が頭をよぎり、不覚にもじわりと涙がこみ上げてくる。



……っ! バカバカ! 私ったらこんなところで泣いたりしたら、桐生君に変に思われちゃう!



もうこれ以上、迷惑かけたくないのに…っ。




涙が零れ落ちないよう、慌ててギュッと強く目を瞑る。


けれどもちろん私がそうやって隣で感傷と格闘していることなど、当の桐生君は知る由もなくて。


そればかりか早く話題を変えたいとばかりに、今度は逆に私に質問をしてきた。



「ゆ、結城のほうはどうなんだよ。風間とその……うまくやってるのか?」

「っ!」



桐生君からしてみれば、なんとなく話の流れで聞いたことなのだろう。


しかし今の私にとっては、それは最も聞かれたくない質問のうちのひとつだった。