「あの……桐生君?」
「ん?」
「その……工藤さんと一緒に、星見ないの?」
「……っ」
迷った挙句思い切って訊ねたのだが、なぜだか返事が返ってこない。
あれ? 私なにかいけないこと聞いちゃったのかな?
桐生君の予想外の反応を怪訝に思い、再び隣を盗み見る。
すると先程まで穏やかだった表情から一転、明らかに焦りを帯びたそれへと変わっていた。
「あーっ…… それはだな……、なんか凛、今日用があるらしくてだな」
「?」
普段は絶対使わないような口調で、しどろもどろ言葉を続ける桐生君。
落ち着かんとばかりに、しきりに目を泳がせている。
なんか桐生君、変……だよね? 工藤さんとなにかあったのかな?
「桐生君、もしかして工藤さんと……ケンカでもしたの?」
「っ!? い、いやっ、してない! 断じてしてないから気にするなっ」
「う……ん……」
おかしい。やはりどう見てもいつもの桐生君からは程遠い。
ましてや気にするなと言われれば言われるほど、余計気になってしょうがない。
本当は落ち着かない理由を問い質したいところだけれど……。
しかし桐生君がそう言うのだから、彼女でもない私がこれ以上追及するわけにもいかないのが現実。
隠し事をされたことに一抹の寂しさを覚えながらも、仕方ないんだと無理矢理自分に言い聞かせるしかなかった。

