「悪い……っ」



そう一言謝り、ばつが悪そうに私から顔を背ける桐生君。


その表情にいつものような余裕は全く感じられず、むしろ可愛いとさえ思えるほど真っ赤に染まっていた。



桐生君のこんな顔、なんだか久しぶり……。



どことなく恥ずかしそうな桐生君を見て、眠っていた過去の記憶が蘇る。


私の部屋に遊びに来た時や、クラス替えで翔と一緒のクラスになった時も、確かこんなふうに苦悶の表情を浮かべていた気がする。



「あ……、ううん、大丈夫」



けれどそんな桐生君同様、もちろん私にだって今のこの状況を冷静に分析する余裕などこれっぽっちも無い。


再びどうしたものかと考えあぐねていると



「結城……あのさ……」

「……?」



相変わらず視線をそらしたままの桐生君が、またしても予想外な言葉を口にしたのだった。