キスから始まる方程式



「七瀬ーっ! なに二階で騒いでるのーっ!」

「なっ、何でもなーいっ!」



階下から聞こえてくるお母さんの怒鳴り声に返事をしつつ、再び心を落ち着かせるように椅子へ深く腰を下ろした。



「そうだ! 絶対間違いない。渡り廊下で男の子とぶつかって鞄を落とした時に失くしたんだっ」



興奮気味に夕方の光景を思い出す。



そうとわかったら善は急げ。


早速明日の朝一番で学校に行き、手帳を回収することにした。


まだ誰かに拾われてなければいいのだが……。



「はぁっ……。やっぱり今日はツイてないや……」



手で頭をガシガシと掻きながら溜め息をひとつつき、小さな声でぼやく。


何はともあれ、とりあえず落とした場所が判明して安堵する私。


失敗が許されない明日の早起きに備え、まだかなり早い時間だったが今日はそのまま眠りに就くことにした。