キスから始まる方程式



「ちょっとだけ……元気補充しようかな」



そうひとりごちベッドから立ち上がると、机の上に置かれた通学鞄の中をゴソゴソと探った。



「?」



しかしいつもならすぐに指先に触れるビニールカバーの感触が、今は一向に感じられない。



「おっかしいな」



更にくまなく端から端まで手を突っ込んだのだが、相変わらず目当ての物に辿り着かなかった。



「え……やだ……ちょっと待ってよ」



初めは余裕だった私だが、徐々に焦りが見え始め探る手も荒くなって行く。



「えっ? えぇっ? やだやだ、どうしようっ」



ついには鞄ごとひっくり返して、中の物を全て床にぶちまけてしまった。



「ない……ない……ないっ……。どこにもない~っ!」



バサバサと教科書やらノートやらの間まで全て探したのだが、それでも目当ての物……『手帳』は見つからなかった。