「……好きだ」
「っ!」
「ガキん時からずっと……七瀬のことが好きだ」
「か……ける……」
その言葉をきっかけに、私の脳裏に走馬灯のように蘇る翔とのたくさんの思い出。
いつも冗談言って笑い合って、すごく楽しかったこと。
私に見せてくれる最高の笑顔や、不器用だけど一生懸命な優しさが嬉しかったこと。
お互い意地ばっか張ってケンカして、悲しかったこと。
素直になれなくて憎まれ口ばかり叩いてる自分が、情けなくて悔しかったこと。
それでも翔がいつも一番そばにいてくれて、ものすごく幸せだったこと……。
自分でもよくわからないなんとも言えない感情が胸の奥から溢れて来て、大粒の涙となって私の瞳から零れ落ちた。
「なんで……っ」
「……」
遅いよ……。
「なんで今更……そんなこと言うの?」
「……悪い」
「なんであの時、そう言ってくれなかったの?」
「七瀬……」
もう遅いんだよ……っ。
「あの時、そう言ってくれれば……私……っ」
「っ!」
―― 翔と付き合ってたのに……!
グイッ
「っ!?」
その時突然、背後からものすごい勢いで左手首を掴まれた。
驚きのあまり、反射的に背後を振り仰ぐ私。
そこには昨日に引き続き、またしてもこんな場面を最も見られたくない人物が立っていたのだった。

