キスから始まる方程式



「お……おい、七瀬?」

「翔、行こう!」

「はぁ? 行くってどこへ……?」



袖を掴んだまま歩き出そうと無理矢理引っ張る私に、翔は目を白黒させながら呆然としている。



翔はただ、私が幼なじみだから助けてくれただけなのに……っ。


今度は私が……私が翔のためになんとかしなくちゃ……!



「決まってるでしょ!? 南條さんのところっ」

「!」



けれど先程と同様、南條さんの名を口にした途端、またしても翔がそれを拒むように動きを止めた。



「……いいんだ」



私から視線を逸らしたまま、そう小さく呟く翔。



また……!



昨日と同じ全く意味がわからない“いいんだ”の返答に、おもわず私は翔に詰め寄った。



「何が? 何がもういいの?」

「……」



またしても顔を歪め口をつぐむ翔。



「いいわけないじゃん! 南條さん、きっと私と翔のこと誤解して今頃泣いてるっ」

「……」

「早くその誤解解いて、南條さんを安心させてあげなくちゃ!」




「私も一緒に行ってちゃんと説明するから……」


そう言ってもう一度翔の腕を引こうとした時、翔の口から思わぬ言葉がこぼれ落ちた。